SSTKコーヒータイム通信-Vol.109-
 コーヒータイムも、今年度から、埼玉県の「デイケア施設」の制度が昨年度で廃止され、新しい障害者総合支援法の施設に変わりました。
 半年すぎて、まだまだいろいろな問題が山積しているのが現状です。国の政策も毎年のように変わり、まだ落ち着いていません。私たち民間も障害者が地域で生きるための各種活動も戦国時代で大変な時代です。障害者が地域で生きて行くためには、私たち民間のパワーが大切と思いますがいかがでしょうか。
 これらのことについてもっと皆で考えていかないと今のままでは恐ろしい時代になるように思います。これからの福祉は、年々大変になってきています。これからの、障害者は、地域で生きて行くのが大変な時代になって行くことでしょう。もちろん高齢者も同じです。(坂本)

●今後の予定
11月 20日、22日、27日、29日、12月4日
第2回同行援護従事者研修(県指定)

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〒351-8799 朝霞郵便局私書箱23号
TEL 048-467-7749  FAX 048-466-3687 E-mail info@coffeetime.jp
までお寄せください。


第2回同行援護従事者養成研修一般課程開催(県指定)
 視覚障害者の移動介護を行うための、同行援護従事者養成研修を次のとおり開催致します。受講を希望される方は、主催者までお申し込みください。
日程:平成24年11月20日(火) 、22日(木)、27日(火)、29日(木)、
12月4日(火)の5日間
時間:10時〜15時(休憩12時10分〜13時含む)
初回のみ9時30分より受付、9時50分から開講式
会場:朝霞市コミュニティセンター 他
定員:20名
受講費用:15,000円
申込方法:官製はがきに、住所・氏名(ふりがな)・電話番号・「同行援護従事者養成研修受講希望」と明記の上、お申し込みください。
締め切り:11月9日(金)必着
※ 記入漏れのあるものについては無効とさせて頂きます。
※ 応募者多数の場合は、先着順とさせて頂きます。
主催:NPO法人コーヒータイム(代表 坂本 さとし)
〒351-8799 朝霞郵便局私書箱23号
TEL048-467-7749、FAX048-466-3687
後援:朝霞市、朝霞市社会福祉協議会


《障害者総合支援法》
 今年の6月20日に成立した、障害者福祉の政策の基本となる「障害者総合支援法」の経緯を簡単に書いてみます。

 2006年12月「私たち抜きに私達の事を決めないで」。この有名なフレーズで知られます、障害者権利条約が国連で採択されました。日本も署名しましたが、この国連障害者批准にむけて国内法の整備の観点から2009年12月、内閣府に障害者制度改革推進本部が設けられ、障害当事者や家族などを構成員とする、障害者制度改革推進会議が設置されました。
 そのなかに当事者などを含めた構成員55人から成る総合福祉部会が置かれ、障害者自立支援法の後の新たな法政について検討した結果、2011年8月にいわゆる骨格提言が出されました。そして、今国会に厚生労働省は障害者自立支援法の一部改正法として、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律、いわゆる障害者総合支援法案を提出しました。こうした経緯なのですが、骨格提言を国は受けました。

 当事者参加ということで約1年半に及ぶ議論を積み重ねて、2011年8月に骨格提言をまとめた。それを政府がどのぐらい尊重するのかということで、全国の障害者が注目をしていました。
 骨格提言では、障害者が地域で平等に暮らすために必要な支援はキチンと権利として保障しようという提案をした。この推進会議は、もとはといえば政府から頼まれて、「本当に良い法律に、今の法律を転換しましょう」と、素案を作ってくださいと頼まれて推進会議のメンバー55名が頑張ったわけですが、充分にはその内容が尊重されなくて残念です。メンバーの中には、夜遅くまで会議がかかりホテルに泊まって赤字になってしまった人もいました。

 政府の説明によると、この障害者総合支援法というのは、名前を障害者自立支援法から障害者総合支援法に改めると、それから理念の条文を設けて共生社会の実現だとか、どこで誰と生活をするのかについての選択だとか、そういう選択についての理念を盛り込むと、障害者の範囲に難病も、障害者に加えるとか、重度訪問介護の対象の拡大、成年後見の人材育成事業の追加などのサービスの拡充そして障害福祉計画をよりニーズに基づく者に補強するなど非常に大きな改革である。
 これは、障害者自立支援法の実質的な廃止である。新しい新法を制定するのに等しい。
さらに、3年後の検討課題などを盛り込んで骨格提言を実現していく大きな第一歩なんだと、理解してほしいという事が政府の説明となっています。
ただ、総合福祉部会で議論してきた内容の視点からみると、必要な支援を受ける権利というものが示されていないことだとか、市町村が支援を出し渋らざるを得ないような財政の構造が維持されていることだとか、難病が一部加わるにしても依然として支援から漏れる谷間の障害が残ることだとか、利用者負担の問題もまだまだ見直しがなされていないことだとか、いろんな問題で骨格提言との落差が大きいのです。非常に残念です。と同時に推進会議のメンバーの努力して来たことはなんだったのだろうか。今後、骨格提言にできるだけ近づける努力が必要です。

 障害者自立支援法意見訴訟団について
 訴訟団が当時の長妻功労大臣との間に結んだ基本合意がありました。その基本合意では、障害者自立支援法は廃止するあたらしい基本的人権を尊重した、障害者の基本的人権を保障する、そういう新法を作るということが約束されました。ところが今回の改正法はそうした基本合意を全く無視した、そういう改正だと言わざるをえません。それは国として、行ってはならないことです。
 なぜならば、単に政治的問題とか、社会的問題というものではなくこの基本合意は厚生労働大臣と訴訟団が文書で交わした公文書ですし、この公文書を基礎として14の地方裁判所で訴訟を終了するための裁判所における和解。これは裁判所の判決です。効力を持ちます。和解においてまで確認されて、14の訴訟を終了させたのも関わらず、それを無視したということは法的に今後問題を残すと言えます。新たな紛争の火種を残していると思います。

 国は、総合支援法では考え方については自立支援法を抜本的に見直しているとも話しております。国は、新法制定ではなく自立支援法の改正となったのは、この関係で60万人の受給者がいて、約6万人の事業者が関係しているのでサービスが受けられなくなる人が出たり、現場が混乱するなどして廃止にできないと説明しています。

 さて、障害者総合支援法は障害者の生活に深くかかわってくるものです。これから細かく見て行きたいと思います。まず、法の理念が書き込まれました。「障害者及び障害児が、日常生活または社会生活を営むための支援は全ての国民が障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を共有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり。」となっています。
 また、共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより、となっています。

 この理念について
 基本的人権とか共生社会とか、骨格提言でも強調した部分が反映されている面がありますが、骨格提言が一番強調したのは地域で暮らすために必要な権利は、キチンと権利として主張しましょうと。
 例えば、昨年の10月から始めた「同行援護」では、国、都道府県では、1月の制限時間については規定がないのに、各市町村になると制限時間を設けています。本当に必要なのに月15時間しか移動の支援が受けられないとか、地域のサービスがないために社会的入院を長期に渡って余儀なくされている事態だとか、いろんな事があるのでキチンと権利性を保証するというものが本来基本理念の中に書きこんで欲しかった。

 本来は障害のある人が地域で暮らすこと(自己決定権)が権利として明文化されることが主張だったと思います。それがないことは、残念ですけれども、そういう不十分な理念です。
 この理念が書き込まれたことによって今後の福祉のあり方、すなわち総合支援法によって実施される福祉がこの理念に近付くということが目標として定められた事自身、あるいは法律の解釈であったり運用の基準という点で理念をどこまで生かすか、ということが大切です。理念であれば、可能な限りなんてものはいらないです。
そういう意味では、不完全な理念ではありますがこの理念を今後どれだけ実になるものにしていくかが、運動としても、あるいは法律的な解釈の上でも大切です。

 さて、今度は利用者負担についての問題なのですけれども、政府は、2010年の障害者自立支援法の改正、いわゆるつなぎ法で、応益負担の制度が応能負担に変わったのだから問題が解決しているんだと、この間の政府の運用で低所得者を無料にするとかいろんな改善をなされてきたので利用者負担問題も解決済みという考えで、今回の改正の中ではこの問題には触れていない。 
 しかし、自立支援医療の応益負担は残っている、地域生活支援事業の利用者負担も残っている、というような事もあります。全体的には、まだ1割を上限として家計の負担能力によって利用料を取りますという仕組みは、前も後も現在も変わらない。現にある程度の収入のある世帯では1割の負担が続いている。ということで、問題は決して解決はしていないと思っています。
 骨格提言では、障害に伴って必要とされる支援は社会全体で支えようと、原則本人は無償にしましょうと、言う観点を示しつつ、ただ特に所得の高い人からは、能力に応じた負担を求めるというそういう、考え方を示しています。その場合でもコミュニケーションの支援など、障害者と非障害者との間コミュニケーションの保証なのに障害者が負担するのはおかしいじゃないかということで、原則無償とするべき領域なども、キチンと骨格提言では示しています。
 非常に大きな問題は、この世帯、家計全体が負担するという考え方で、本人のみの収入にせよという骨格提言の考え方と依然として違うということと、負担能力を法律が何も書いていない。政府が勝手にこのぐらい負担できるだろうという解釈で負担を課していくことができるような法律になっているので、是非今回の法律でもこの問題を改善してほしかったところだと思います。

 骨格提言では、利用料負担を払う必要があるためにサービスの利用を控える事がないようにと、基本的な考え方を示しているのですが、現実には負担が発生する人は、福祉サービスを調整している人が多いことも事実です。

 利用者負担というのは、非常に考え方として難しいとは思います。例えば、何でもただで利用できるということでも良いのか,という国民のコンセンサスが得られるのかという別の見方もあるかと思います。
 しかし、骨格提言でも言っているように、障害があっても人間らしい生活を維持できることが日本の福祉ですし、あるいはそのことが今回の改正法の本来、心臓部でなくてはならないと思うのですが。ところが、この部分については今回の改正法では全く改善がない。
 そういう点が例えば視覚障害者で言いますと、同行援護事業、移動支援事業を利用した場合に結局は利用者負担があったり、それから出先で二人分の料金を取られたり、そういう形で視覚障害者が外出する時の大きな足かせになってしまう。そういうことがまだ改正法では残念ながら改善されていないということになっています。

 障害程度区分、支給決定について
 今度の法律では、障害程度区分を含む障害支援区分を含む支給決定のあり方を3年かけて見直すということと、障害程度区分を障害支援区分という名称に変更して、中身も改善しつつ2年目で見直すという、2つのことをこの点に関しては法律で書き込んでいます。
 骨格提言では障害程度区分をやめて、個別のニーズを評価するきちんとした方式、諸外国でも一般的になっているそういうものを日本でも取り入れて、6段階ぐらいに分けて、あなたは区分3だからこの程度の支援でいいでしょう。という個別の事情ではなくて画一的なそうした支給のあり方はやめましょうと、いうのが骨格提言の提案です。それをほんとに政府の法律の中では3年かけてその方向に改善するのかどうなのかが非常にわかりにくくなっています。
 そればかりか、障害程度区分という名前を変えて、そうした数段階の区分で確実的にサービスを提供するような仕組みを温存するかのような法律になっています。

 これは個別のニーズというか、その人その人の必要性の応じた目線でもって支給決定がなされるのが当り前じゃないかという発想が、法律の中に書かれる必要があります。

 障害程度区分を障害支援区分という名称に変えるのですが、名前を変えるだけでは駄目なわけで、その名前を変えるということがどれだけ中身の改善に結びつくかが必要です。これからの問題です。
 ただ、非常によくないのが、あくまでも障害の程度とかを機械的、医学的と言いますか、あなた視力いくつだから、運動制限はこの程度だからというグループ分けをして、利用できる時間数を決めるというのはやはりおかしいわけで、一人ひとりの障害だとか、生活の実態とか、そういう現実にその人が必要とする支給量が充分に考慮されるというのが本来福祉のあり方なのにこの障害程度区分あるいは名前を変えた障害支援区分というのがそれをまだ受け入れるところまで来ていないというのが、改正法の問題点ではないかと思います。また、障害の部位にあった設問を作り、区分を出す必要があります。

 以上のように、今回の法律がまだまだ我々障害者にとって不満の多い法律です。もっと良い方向での、法律ができると思っていたのに……。
 また、障害者権利条約もまだ日本では成立していません。


「坂本のきままなひとり言」
 毎日のように「人身事故」が報道されています。何でこんな日本になってしまったのだろうか。
 国会の先生さんたち、豆腐に頭を……。考えて下さいよ。ほんの少しでも良いので、お願いしますよ。あーーあ。(坂本)


≪編集人≫
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